ITADAKI TIMES

頂を最大限楽しむためのウェブマガジン

ITADAKI-ism

Candle Stageに初めてグランドピアノの音色が響き渡る日
〜イトウ マサヒロの挑戦〜

 

【※こちらは頂開催中止となった2020年に取材したインタビューを再掲載した記事です】


 

2016年6月5日
原田郁子の奏でるグランドピアノの伸びやかな美しい音色が
Candle Stageから会場全体に響き渡りました。

 

頂 -ITADAKI- 2016 原田郁子 from clammbon

 

頂がスタートしたその時から、たくさんの人の手によりに大切に育まれてきた頂のメインイベント、キャンドルタイム。

野外での使用のダメージと、吉田公園特有の風や雨の影響も数年分積み重なって、2008年の頂スタートからCandle Stageを支えてきたティピ(インディアンが住居として使用していた円錐型のテント)のステージも、2015年にはすでに限界を迎えていました。

唯一無二のこのステージを大切にしてきた頂のスタッフメンバーにとって、Candle Stageを新しくすることはとても大きな挑戦であり、また越えなければいけない課題が山積みでした。

これまで頂やCandle Stageに関わってきた人たちの想いを全て受け継いだ上で、新たなステージをゼロからつくりあげるという大きな挑戦。
これに信頼できる仲間たちと楽しみながら取り組み、頂に新しい風を吹き込み、洗練された新たなCandle Stageをつくりあげたのが“アートディレクター” イトウ マサヒロさん。

 




だんだんと日が暮れていく中、

池の向こうに凛と立つそのステージから会場全体に行き渡る、
グランドピアノの音色とキャンドルのあたたかなゆらめき 。

それは、頂が夢見ていたCandle Stageでのグランドピアノが実現した瞬間。
そのステージにはたくさんの工夫とアイデアが散りばめられていました。

今回は、Candle Stageのディレクターの一人でもある“アートディレクター” イトウ マサヒロさんに、頂との出会いから、新しいCandle Stageが立ち上がるまでのSTORYを伺いました。

 

 

このインタビューを読んでくれている人の中には頂に来た事がない人もいると思います。最初に、イトウさんと頂の出会い、それからイトウさんからみた頂の印象を教えてください!

最初は、お客さんとして遊びに行っていました。家族でも安心して楽しめるし、こどもにも優しい。ハッピーな雰囲気がそこら中に漂う、とにかく“いい感じ”のフェスという印象でした。

スタッフとして関わってみると、とても多様な人達がエンパワーメントされていて、そのにじみ出る“いい感じ”の正体がわかりました。ITADAKIという柔らかくも筋の通った大きな入れ物の中に、とても自由で個性溢れる人達がいろいろな表現と心地良い責任感を持ち寄って、気持ちよく支え合っている。こういう人たちがこのイベントを作っているんだなと納得し嬉しくなりました。

イトウさんがキャンドルステージを手掛けるキッカケはなんでしたか?

2016年のハンバートハンバートのステージが最初です。その年にCandle Stage自体をリニューアルするというミッションからキャンドルチームに参加させてもらいました。

頂としてもとても大きな決断でしたが、Candle Stageを2016年に全面リニューアルすることにしました。イトウさんには躯体作り(くたい=ステージのフレーム)やテントの生地探しなど本当に一から関わっていただきました。当時、ステージ設計にあたって意識したこと、考えていたことをぜひ教えてください!

2015年にエントランスゲートを作らせていただいたのですが、その年の BEGINのキャンドルタイムがすごく良くって。2016年ステージのリニューアルの相談を受けたときは、とても光栄だと思いました。そして、今までのCandle Stageのいきさつや歴史・想いを伺い、世界中のフェスのステージをリサーチしたり、個人的にも興味のあったバックミンスターフラーの球体ドームやBILL MOSSの古いテントの構造やデザインなども参考にしたりしました。
まずは“できる できない”を一度置いておいて、イメージを膨らませることに専念していました。振り返るとこの時は純粋に楽しいひと時でしたね。

 

▲頂 -ITADAKI- 2015 エントランスゲート

 

▲BILL MOSS

 

設計にあたって、理想の姿と現実とのギャップがあるともおっしゃってましたね。それはどんな点でしたか?

僕が膨らませた大きなテントというアイデア(ほぼ妄想)に、ITADAKIのステージとして必要な機能や実際の施工する場所(公園)の制約、また屋外であるという自然条件が、波のように押し寄せて来ましたね。
ITADAKIは、大井川の河口にある吉田公園を会場としているので、遮るものは何もなく海から南風をダイレクトに受けます。更に、舞台の下地はコンクリートタイルの歩道。アンカーを地面に打つこともできません。また、イベントのための施工期間は数日で撤収は翌日。

つまり、ノーアンカーで短期間で施工でき、ノックダウン式(組み立て式)で、海風に耐えれる構造の大型のテントステージ。更にステージの間口はできるだけ広く、それでいて雨風を防ぎ、グランドピアノも置ける防水性。
更に前面には池があり、欲を言えばステージをより広く見せるために池に向かってせり出したい。本当にできるのだろうか?この時は話が現実的になっていくにつれ、不安しかなかったですね。
僕はリサーチやデザインはできても、構造や強度設計、施工に関しては全くの素人なので、竹ひごととキャンバス地で作った模型を片手に頼れる建築士の仲間に相談を持ちかけました。

 

 

信頼できる建築大工チーム(マサさん/設計、ヒデさん/丸太施工)と日本中のフェスでテントを施工するテントチーム(井田さん、タローさん)や、強度を担保するための剛鉄製の金具をハンドメイドで作れる職人さんなど、次々につながり、竹ひごから始まった模型は何度ものブラッシュアップを繰り返しながら、スケールと精度を上げていきます。

 

▲マサさん 設計/制作

▲マサさん 設計/制作

▲井田さん(テントチーム) 制作

▲井田さん(テントチーム) 制作

(二重構造で雨漏り対策したり、灯りがいい感じでもれるようにテントの生地を試したり、実際の1/30スケールの模型で、試行錯誤しました。)

そのたびに形を少しづつ変えながら、課題を一つずつ達成していき、最初の模型からおよそ半年で、ついに原寸のステージが立ち上がりました。

 

▲長野県 白馬で実際にステージを仮組みしている様子

 

 

本当に素晴らしい職人さんたちの叡智の結晶としてこのステージは立ち上がりました。ノーアンカーで自立し、組み立て式のオリジナルのステージとして、このサイズでこのフォルムは、世界一だと思います。

 

 

初めて吉田公園でこのステージが組み上がった時は、丸太の迫力がすごくて、その存在感に圧倒されました!他のステージの関係者たちも続々と見にきて、「これはすごい」「見事」など口々に言っていて、とても誇らしげな気持ちになりました!

こうして、イトウさんのアイデアからスタートしたステージが実際に完成したわけですが、イトウさんはステージのリニューアルだけでなく、ベンさんとともにディレクターの一人としても活躍されています。
頂ではこれまでどんなアーティストのステージを手掛けてきましたか?

2016年のハンバートハンバート、2017年の高木正勝、2018年のEmi Meyerの3アーティストです。
(2019年はお休み)

 

▲イトウさん作成ステージ図面 2018年Emi Meyer

 

▲頂 -ITADAKI- 2018 Emi Meyer(エミ ・ マイヤー)

 

中でも特に印象に残っているステージ、アーティストがあれば教えてください!

やはり2016年の「ハンバートハンバート」のステージですね。その年にステージをリニューアルしたのですが、お披露目するステージのファブリックは丸太とキャンバスと見た目はとてもシンプル。「ハンバートハンバート」の素朴なアコーステックデュオというスタイルもあり、できるだけシンプルにと思い、ステージの装飾も丸太とロウソクだけにしました。PAも素晴らしく、最初の出音で鳥肌が全身に立ちました。

 

▲頂 -ITADAKI- 2016 ハンバートハンバート

 

イトウさんのステージで印象に残っているのが、高木正勝さんのキャンドルステージで「ほたる」を放ったことがありましたよね?あれはどんないきさつで生まれた発想だったんですか?

もともと高木正勝さんの大ファンで。
音楽に留まらない表現の多様さにアーティストとして、とても身近に感じていました。
高木さんのステージの演出を考えたときに、ステージの中に里山を再現したいというアイデアがベースにありました。ステージ内に植栽を施し、人の暮らしの感じられる里山のような雰囲気を出したい。これを実現するために、The Bulb Bookのハチくんを始めとする植栽チームにもCandleチームに加わってもらいました。
同時に高木さんにも、このステージを楽しんでもらいたいという思いもあり、普段、裸足でピアノを弾いている姿をお見かけしていたので、お客さんからは見えないかもしれないが、セミコンのピアノの足元に柔らかい芝を敷き詰めたり、良い匂いのする花を近くに置いたり、色々と工夫をしていました。そういう細いことが好きなんです。
そういった演出を考えているなかで、お客さんにも高木さんにも喜んでもらえるサプライズとしてホタルを思いつきました。ホタルの生態系について調べることからはじめ、実際にホタルのビオトープを造って管理している方にもホタルが育つ環境のお話を聞いたりしながら、密やかにITADAKI由来のホタルがここにいついてくれたら素敵だなと思いながら準備をしました。

 

▲頂 -ITADAKI- 2017 高木正勝

 

実際、ホタルがステージ内の植栽に止まった時は感動しました!
ステージとアーティストに対する最大限のリスペクトが込められた演出にイトウさんのこだわりや細やかな気遣いが感じられます。

また、以前お話しを伺った際、ステージから見ていると「魔法の輪」が見えるという言葉がとても印象的でした。ぜひこのインタビューを読んでくれている皆さんにも「魔法の輪」がどんな現象か教えてくれませんか?

毎年、本番はお客さんに混じって客席からステージをみているんですね。これは僕にとっても、とても贅沢な時間なんです。
このステージは、電気に頼らず、会場中の明かりはすべてキャンドルのみ。落とせる電気はすべて落とす。このストイックなコンセプトに基づいて、Candle Stageのライブは行われます。ITADAKIでしか体験できなこのスペシャルなステージは、この強いコンセプトが生み出しているものだと思います。
ロウソクの光は一つひとつはとても弱い光で、ステージから離れるにつれて、ステージに陶酔できるその魔法みたいな空気感はどうしても薄れて行きます。キャンドルチームの目標は、その放射線上に広がる魔法の輪みたいなものを、アナログな表現だけでどこまで広げられるのか、毎年、数センチでも遠くまで広げて行きたいと思っています。そして、なにより、お客さんがロウソクを持参して参加し、自然発生的にも、その輪がどんどん大きくなっていったら、とても素敵だと思っています。

 

 

残念ながら、新型コロナウイルスの影響で今年の頂は開催を中止しました。今年は、これまでのキャンドルタイム出演アーティストのプレイリストを公開し、お家で楽しんでもらおうと考えています。それぞれ、お家でどんなセッティングで聞いてもらいたいですか?

大切な人とロウソクに明かりを灯して聞いてもらいたいですね。

 

 

残念ながら今年は開催中止となりましたが、これまでのキャンドルタイム出演アーティストのプレイリストをspotifyで公開することを決めました。

プロデューサーがこのステージにかける想いを読みながら、ぜひお家でこのプレイリストを楽しんでください。

Written by

イトウ マサヒロ

イトウ マサヒロ

1978年静岡県生まれ。アートディレクター、グラフィックデザイナー。静岡にUターン移住し、『Salmon Design』を主催。アウトドア、スポーツ、ファッションなどの広告や雑誌などのデザインを手掛けるかたわら、アウトドア×地域活性化を目的とする会社『River roots research & Lab』を、南アルプスの最南部の川根本町でスタートし、『不動の滝自然広場オートキャンプ場』や『南アルプスマウンテンマラソン』を運営。

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