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ドラマー、クリスデイヴをmabanuaが語る!

昨年、頂のステージに上り、話題となったロバート・グラスパー。
彼を含め、今、西海岸のジャズ・シーンがヒート・アップしている。

そんなジャズ界のメイン・ストリームにいるのが、ドラマー、コンポーザーとして活躍しているクリス・デイヴだ。
デイヴの活動の場はジャズにとどまらず、ヒップ、ホップやゴスペル、ポップと多岐にわたっている。
オリジナリティ溢れるドラミングは引く手数多で、ロバート・グラスパーをはじめ、ディアンジェロ、アデル、宇多田ヒカルらと多彩なミュージシャンとの共演はあまりに有名だ。

そんなクリス・デイヴの魅力を、今年の頂のステージを藤原さくらとと共に飾るドラマー、mabanuaに聞いた、今のジャズ界、デイヴのプレイ、そして自らの頂でのパフォーマンスなど、mabanuaが語る。

 

mabanua

ドラマー/ビートメーカー/シンガーという他に類を見ないスタイルが話題の日本人クリエイター。全ての楽器を自ら演奏し、ブラックミュージックのフィルターを通しながらもジャンルに捉われない音創りが世界中から絶賛される。
2010年、Ovallのメンバーとして活動を開始 、ソロも含めFUJI ROCK、SUMMER SONICなど多数の大型フェスに出演。
2012年にリリースしたソロアルバム『only the facts』はiTunesで1位を記録、各CDショップでも品切れが続出し大きな話題を呼ぶ。
Ovall活動休止後、ソロとしてChara、Gotch (ASIAN KUNG-FU GENERATION)、矢野顕子、くるり、大橋トリオ、安藤裕子、SKY-HI (AAA)、SALU、Awesome City Club、Sick Team、DEAN FUJIOKA、藤原さくら、秦基博、菅野よう子、福原美穂、BENI、Eshe (Arrested Development)、一十三十一、川本真琴などのプロデューサー、リミキサー、ドラマーとして活動。
また、Google、キユーピー、ユニクロ、SONY等のCMやテレビアニメ「坂道のアポロン」「スペース☆ダンディ」などの楽曲を制作。Toro Y Moi、Chet Fakerなど海外アーティストのオープニングアクトやHennessy artistryでおこなわれたMadlibとの即興セッションも話題になる。
現在は U-zhaan × mabanua、Green Butter (budamunk × mabanua) などのユニットでも活動。
最も注目されている日本人ドラマー/クリエイター。

web:http://mabanua.com/

 

——ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントン、フライング・ロータスらにより、今、ジャズ界では新しい風が吹き、それがメインストリームになろうとしています。その中にクリス・デイヴもいると思いますが、彼らの音楽、音楽界の流れをどう感じていますか?

この質問の中に上がった名前でいうと、クリス・デイヴは一番年長で、JAZZR&BPOPSなどを経験してきた彼の経歴からみても、音楽的に最も幅広くキャリアのある人だと思います。むしろクリス・デイヴを起点に、その後のグラスパーやフライング・ロータスのようなビート・シーンまで、すべてが繋がっている、という考え方もできるのではないでしょうか。海外はジャンルや年齢で音楽の場が区切られていない分、すごく海外(アメリカ)らしいというか、彼らの音楽シーンがここまで広まったのも自然な流れのような気がします。

 

——今のジャズにはヒップホップが大きな影響を与えているように思われます。クリス・デイヴの曲にもヒップホップのテイストを取り入れた曲がありますが、ヒップホップの曲のプレイは特別なものがあると思いますか?

昔はヒップホップがジャズを取り入れていたのに、今は、逆の現状が起きているのはおもしろいですよね。ジャズは自由な音楽ではありますが、ヒップホップも同様にコードやセオリーに縛られない、自由な部分が共通していると思います。とは言え、両方とも昔からの様式美みたいなのは少なからずありますが…。そういう意味でもヒップホップの特別感は、ジャズと同じかもしれないですね。

 

——クリス・デイヴについて、同じドラマーとしてどんな印象をお持ちですか?ドラマー目線で彼の印象について教えてください。また彼を知ったきっかけ、作品なども教えてください。

彼のレコーディング作品として初めて聴いたのは、2005年のミシェル・ンデゲオチェロのアルバム『The Spirit Music Jamia : Dance of the Infidel』です。その前にDVDか何かでミント・コンディションとのプレイを見ていましたが、それと『The Spirit Music Jamia〜』を聴き比べるとかなり違います。それまではストレートでアグレッシブなプレイしか聴いたことがなかったのですが、『The Spirit Music Jamia〜』からは、いきなり変貌しているんです。まるでクリス・デイヴの本来の個性が、いきなり飛び出てきたようなイメージです。『The Spirit Music Jamia〜』のライブバージョンがネットにも上がっていますが、

そっちの方がより凄さを体感できると思います。楽曲のグリッドや小節を飛び越えるプレイは、彼のトレードマークですが、そんな個性的なプレイをしているにもかかわらず、音楽的な部分を失っていない。技術的な部分というより、楽曲のビートが崩壊するギリギリのところで、音楽全体を自由自在にコントロールできる。そんなセンスが、一番凄い部分だし、魅力なんだと思います。

 

——クリス・デイヴのプレイは、ちょっと変態的で、普通のドラミングとはかけ離れている部分があると思います。ドラムセットでもスネアを二つ使っていたりしていますよね。そのようなプレイはどう思いますか?

たしかに変態的です。でも、たぶん本人はそんなに深く考えていない気がします()。スネアを二つ使ってビックリさせてやろうというよりは、音楽的に二つのスネアの音色を、一つのセットで出せたら便利だなと思ってやっているのではないでしょうか。楽曲にとって欲しい音を作るために、たまたま二台置いてみただけなんじゃないかなと…。クリス・デイヴの何が凄いかというと “自然にやったことが、周りからしてみればとんでもないこと“だったということ。普通は“自然にやったことはあくまで自然に見える“ということだと思うので…。

 

——クリス・デイヴのプレイから影響される部分はありますか?

ちょっとマニアックですが、スティックのスピードですね。どんなスローで小さい音でも、スティックの動きが凄く速いので、音がスコーンって飛んでくるんです!

 

——フェスに出演した時は、他に出演するドラマーの演奏は気になりますか?

海外アーティストのドラマーはめったに見れる機会がないので、よく見に行きますね。もうセッティングから見ていますよ。客席ではPAを通した“処理“された音なので、色付けされていない“素“の音を、舞台ソデで聴くのが一番勉強になりますね。

 

——影響を受けたドラマー、好きなドラマーをそれぞれ挙げてください。

クリス・デイヴはもちろんですが、あえてそれ以外で言うと、ザ・ルーツのクエストラブ、ジョン・メイヤー・トリオのスティーブ・ジョーダン、ザ・バンドのリヴォン ヘルム。まずはこの3人ですね。

 

——クリス・デイヴも今年ソロアルバムを出しましたが、ご自身もソロアルバムをリリースされています。曲作りはどのように行っているのでしょうか?

ビートから考える曲とコードから考える曲の2パターンに分かれますね。でも、それらをいざアレンジする時は、必ずドラムのパターンから作り直して、曲の流れを構築しますね。

 

——今回の頂にも優れたドラマーが多数出演しています。ご自分のプレイで観客に“ここを見てほしい“と思うところはどこでしょうか?

でかい音は嫌でも耳に飛び込んできますが、その間の小さい音、音符を感じてもらえたら嬉しいです。静あっての動みたいな。あとは逆になってしまいますが、まずは音楽全体を楽しんでもらえたら嬉しいかなと()。むしろ自分の演奏で、フロントのパフォーマンスがいっきに良くなることがドラマーとして一番の喜びなので!

 

—— 今回の頂では藤原さくらさんとの出演ですが、二人でどんなステージにしようと考えていますか?

今回は歌&ギターとドラムだけなので、本当に極限のミニマルな編成です。その中で、ドラムがどう鳴っているかを聴いてもらえたら嬉しいです。あとドラム以外にもギターや鍵盤も弾くので、その使い分けも見てもらえたらと思います。

 

 


 

mabanua氏へのインタビューいかがでしたでしょうか?

クリス・デイヴへのリスペクト、mabanua氏の目線による今の音楽シーンの現状、また彼のプレイなどが少しでも伝わったのであれば嬉しいです。

次回はSOIL&”PIMP”SESSIONSのドラマー、みどりん氏へのインタビューを予定しています。みどりん氏からの見たクリス・デイヴの存在、頂での自らのプレイなどを語ってもらえると思います。ぜひ、ご期待ください!

Written by

すぎもとまさひろ

すぎもとまさひろ

雑誌ぴあでの編集、ライティング作業から始まり、90年代にはF1ライター、その後はポパイ、ブルータスなどの雑誌で執筆。ジャック・ジョンソンや、トミー・ゲレロのアルバムのライナーノーツを手がけ、現在では音楽記事やコラムなどを中心に活動している。

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