18年ほど前、学生服を着た私は友人に譲ってもらったショックウェーブにMighty CrownのCrown Jugglazをセットし、ヘッドホンと心を震わせながら学校に通っていた。
この作品には、オリジナリティ溢れる“ダブプレート”が満載だった。ダブプレートとは、サウンドの為に歌い手自身の持ち歌のリリックを書き換えたり、原曲のリディム(トラック)を別のリディムにのせかえたものであり、これはサウンド独自の表現やメッセージを原曲とは違った形で伝える、レゲエ独自の文化である。
Mighty Crownならではの表現方法が存分に詰まっており、彼らのミックステープや現場録音の音源は、のちのサウンドマンやDeeJay(歌い手)となっていく人々の教科書ともなるべくものであった。
そして、彼らはダブプレートや市販の7インチレコードを駆使し、サウンド同士が互いの闘志をぶつけ合う“音と音の戦い”サウンドクラッシュで、90年代後半から今もなお、世界トップクラスの地位を維持し続けている。
私が印象的に残っているのは、1999年アジア人として初めて、世界一のサウンド・システムを決める戦い「ワールドクラッシュ」でチャンピオンに輝いた翌年、ニューヨークで開催されたワールドクラッシュに前回チャンピオンとしてステージに立った時のことである。会場内のほとんどがアフリカ系のオーディエンスで日本人などほとんどいない状況の中、プレイ直前から観客からはブーイングが浴びせられた。しかし彼らがMCでそこに居る全員へのリスペクトを示し、ジャマイカへの感謝を込めてジャマイカ国歌をかけた瞬間、会場のブーイングが一気に賞賛に変わり、さらにその後かけたONE BLOODのダブプレートで会場全体が1つとなった瞬間は、鳥肌が立つほど衝撃を受けた事を今でも覚えている。
私が、2000年代前半にジャマイカに行った時も、すれ違う幾人ものジャマイカンたちが、私が日本人だとわかるとすぐに「Mighty Crownを知ってるか?」と声を掛けてくる様は、レゲエの母国での知名度を物語る一幕だった。
そんなワールドクラスのMighty Crownが、ジャンルレスで様々な人が集まる頂の舞台で、どんな表現をするかワクワクが止まらない。
それはもとよりレゲエのサウンドと言うものにピンときていない人は、ぜひ当日のMighty Crownに注目していただければ、その答えが出るだろう。
Mighty Crown feat. Awich – Foo Fool Boy
Mighty Crown feat. Maccho from OZROSAURUS,Rudebwoy Face / TRUST YOURSELF