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高木正勝

高木正勝

 今、高木正勝さんは、兵庫県の里山の小さな村で暮らしている。2011年に東京から静岡に戻ってきた僕は、ほんの少しだけ、勝手に親近感を覚えている。

 僕が初めて高木正勝さんに触れたのは、テレビCMにクレジットされた「miusic by Takagi Masakatsu」の文字と力強いピアノ曲だった。すぐにGOOGLEで検索し、高木正勝というアーティストに出会った。その後も、生活の中でふと耳を止める音楽が高木さんの曲であることも多く、そういう時はニタリと幸せな気持ちになる。

 友人に勧められて「おおかみこどもの雨と雪」を見たのは、長男が2歳のころだった。全編を通して疾走するピアノの旋律に心地よさと同時に“フツフツ”としたエネルギーが映画のストーリーと共鳴するように物語を推し進めていく。こどもには少し難しい物語だが、時折、グッと引き込まれるように見入っていた息子の姿はとても印象的だった。

 そして、2015年の頂 -ITADAKI-にて、少し遠目に初めてのライブを経験する。映像とその環境音とピアノとがシンクロしていく。観客は手拍子でリズムを刻んでいる。心地よさと一種の危うさのような切なさとが、波形のように繰り返し押し寄せてくるような、とても素敵なライブだった。

 その翌年に、妻に誘われて訪れたヴァンジ彫刻庭園美術館。動物をテーマとした様々なアーティストで構成する「生きとし生けるもの」という企画展。三沢厚彦さんの彫刻や、画家・絵本作家のミロコマチコさんなどの作品と共に、白壁に映し出された、高木さんの『うたがき』という映像作品を背もたれのないソファーに座って家族で見た。映像との組み合わせによる、新しくも不思議な音楽の体験。とても幸せな週末の思い出である。

 高木正勝さんの表現の多様さ、フォーマットされていない活動やその幅が、やさしく僕たちの生活のすぐそばにあることに改めて気付く。多様であることが関わりを増やし、普段の何気ない会話や生活の空気感をつれて、すっと染み込んでくる。里山での暮らして始めてからは、一層、色濃くそれらを映し出していると思う。

 今年、高木正勝さんが、キャンドルステージに出演をする。ロウソクの灯りと一台のピアノ。この表現でライブを見れることはすごいことかもしれない。
微力ながら、このステージに関われるとことに感謝しかありません。今から楽しみで仕方がない。


関連動画

高木正勝 「バケモノの子」より / Takagi Masakatsu – a song from ‘The Boy and The Beast’

高木正勝 – Girls

Written by

伊藤 正裕

伊藤 正裕

1978年静岡県生まれ。グラフィックデザイナー。2011年に静岡にUターン移住し、アウトドア、スポーツ、ファッションなどの雑誌や広告のデザインを手掛けるかたわら、地域活性化を目的とする会社River roots research & Labをスタートし、『不動の滝自然広場オートキャンプ場』を運営。2016年には『南アルプスマウンテンマラソン』を仲間たちと開催。

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