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MUSIC

ミトが語るクラムボンとカルテットが作り上げる
キャンドルタイムの景色

1日に1アーティストのみ。そのためにだけに用意されたステージデコレーション。そして会場内の全ての電気を消し、キャンドルの灯りだけとなるキャンドルタイムはITADAKIの中でも特別なステージです。
今年の1日目にはクラムボンが出演。しかも一昨年前に数少ないライブで披露されたカルテットセットということで、楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
そこでクラムボンのミトさんに今回のカルテットセットについてやITADAKIというフェスについて色々とお話を伺いました。

 


 

「カルテットでやってみます?」

クラムボンとしてはこれまで2014年と2018年に出演されていますよね。2014年のFolkloreの映像は本当に素晴らしく、何度も見返しました!

自分たちでは普段通り、なんてことなくやったんですけどね。ただ、フェスでは“そこでこの曲をやると、なんの作用か知らないけど化ける”という事がよくあるんですよ。まさに2014年のITADAKIのFolkloreがそうで。

みんなが曲に合わせて手を横に振ってくれたのはITADAKIが初めてだったんです。各所そういうことをやってる子はちらほらいたんですけど、あんなに全体でレスポンスが整ってたのは初めてで。だから郁子さんは「すごい!」って言ってるんですよね。

そうだったんですね。

その余韻がすごくあったので、2018年はFolkloreで始めてみたんです。あの景色を思い直して始めたら、またその次へいける気がして。結果、見事にアップデートしてライブを終わらせることができましたね。

そして今年はキャンドルタイムに出演するという事で、しかも貴重なカルテットでのセットになるそうですが、今回のステージはどのように決まったのでしょう?

今回の出演に関してお話したいと言って、ITADAKIチームは総出で直談判に来てくれたんですよ。その景色はもはや何かの談合が始まるんじゃないかってくらいで(笑)。ここまで食い込んでくる人たちもなかなかいませんから、彼らの熱意を感じましたね。

それ程にクラムボンのキャンドルタイムを観せたかったということですよね。

その日以前にキャンドルタイムでお願いしたいという話は少し聞いていたんですよ。だからクラムボンがキャンドルタイムをやるならどんなステージがいいかなという事はずっと考えていて。そこで一昨年カルテットでライブをしたけど、外で弦を携えてのライブはやったことはないなと思い付いたんです。

以前のカルテットはビルボードでのライブでしたもんね。

だから、これは今回チャンスかもしれないと思って「カルテットでやってみます?」ってお話をさせてもらいました。

カルテットでの出演はミトさんからの提案だったんですね。

ただ僕らは徳澤青弦カルテットと一緒にやってきたんですが、ITADAKIの日程はバンマスである青弦のスケジュールが合わなかったんです。でも過去にやったスコアがあるので、それを使えばいけるだろうという事で青弦にも「バンマス。申し訳ないんだけど、あなたいないけどやりたいんだよね」って直接話をして許可をいただきました。

青弦さんという重要なポジションの方がいなくても、ITADAKIでカルテットを観せたいと思ってもらえて良かったです!

でも青弦からの遠隔操作がすごいんですよ。メンバーを選ぶのにもダメ出しが来るんです。「候補だけ挙げるから、あとはあなたの好きなように…」って言うんで、好きなように選んだら「そこはこっちで…」って。意外と遠隔でこだわってるやないかいっ!という(笑)。

ステージにはいないけど一緒にいる感じがしますね(笑)。

完全に影のフィクサーですね。

 

 

カルテットと演奏するという事

やはりこれまで打ち合わせは念入りにされてきたんですか?

カルテットってやはり普通のバンドでの演奏とは違うんですよ。弦が入るということは、あくまで譜面の上で物事が成り立つので、バンドでやっているような各々の呼吸に合わせたフリースタイルではできない。それをうまく一つに成り立たせるためにはモニターなどのシステムもガラッと変わるわけです。僕ら演者はそれを理解しているけど、野外でやるとなると齟齬が生まれやすいので、打ち合わせは早めからしてましたね。

ミトさん自身は実際にこれまでキャンドルタイムのステージをご覧になったことはありますか?

2016年の郁子さんのステージは映像でみました。お恥ずかしながら、ITADAKIではいつも控え室の緑茶ハイが美味しすぎて他のステージを見る前に仕上がっちゃうんですよね。MCで「ITADAKIで頂きました!!!」とか言っちゃうレベルまで仕上がってるので…(笑)。

それほど美味しい緑茶ハイ、すごく気になります(笑)。では、初めてがステージの上からになるんですね。

いつもはステージから海を見ながら演奏してますけど、今回は海を背負う形になるんですよね。そこからの視線はまた全然違うでしょうし、フレッシュな感じがしますね。

カルテットでは譜面を見て演奏するということですが、以前のライブで演奏した楽曲を再び披露するということですか?

今年作った曲もスコアがあるので、今回は新しいものをやろうかなとは思っていて。それには僕がスコアを書き直さなきゃいけないので、僕が一生懸命頑張れば新しいのが聴けます(笑)!内容としては一曲にボリュームのあるものではなく、一曲一曲が濃いようなセットを組みたいと思っています。

短編集的な感じですね。スコアを書き直すということですが、カルテットのスコアを書く上で難しいポイントとはどんな所なのでしょう?

カルテットは一番コンパクトな重奏なんです。弦の人たちは基本的に一音で演奏していくので、その四声をどう細くせず、太く、僕らのアンサンブルに入れていくかということになる。それはレコーディングで作るスコアリングとは違うんですよね。ただ“抜けの良いスコアリングをしていく”というスキルは共通する部分ではあります。

バンドととしては弦と合わせる上で調整する部分はあるんですか?

弦はpp( ピアニッシモ − 非常に弱く)からff (フォルティッシモ − 非常に強く)まであるから、そのダイナミクスを感じることもとても重要なんです。だから弦がppで演奏しているのに僕らがf(フォルテ − 強く)で演奏してはバランスが悪くなってしまうわけで。僕らの演奏もオーガニックに考えなきゃいけない。そういう頭に切り替えていくのは特殊かもしれないですね。

なるほど。

もっと言うと、風が強ければ私たちがppで演奏していても客席には届かないんですよ。だからmp (メゾピアノ − やや弱く)かmf(メゾフォルテ − やや強く)くらいで音を鳴らさないといけない。そのレンジ幅を理解していないと、表現をみんなの耳に届かせることができないんです。

天気や風の強さは時間ごとに変わるし、フェスではゆっくりリハーサルする時間も取れないので調節は難しそうですね。

それがあるからこそ、今回のメンバーは青弦が厳選した人になっていったんですよね。風を読んだり、バンドとアンサンブルした時の自分の出音をシュミレーションできるような、センスを持ってる人を集めないと成立しないから。今となって思えば青弦は的を得た発想で選んでいたんだなと思いますね。

 

 

開放感と緊張感が生み出す会場の空気

リハーサルは結構重ねているんですか?

皆さん色々な現場で活躍されている方なので、メンバーを一回集めるだけでも大変なんですよ。なので普通では考えられないリハーサル時間で仕上げていくことになると思います。

かなりタイトなスケジュールなんですね…。

でも、それはネガティブなことではなくて。ある程度音源と自分のパートを認識して演奏していかなくてはならないので、研ぎ澄まされてくるんです。だから結果本番が良くなることの方が多いんですよ。

すごくプロフェッショナルな人たちだからできることですよね。

それに本番もかなり集中しなくてはいけない。その凜とした空気がマジックアワーであるキャンドルタイムの時間と合うことで、より集中力を高めてくれるんじゃないかと思います。さらに、その空気はお客さんにも派生するだろうから、会場全体が一本線が張った状態になる。でも環境は開放的な空の下だから、一体どういう気持ちになりながら演奏できるんだろうって考えますね。多分景色は全く違うものになると思うんです。開放的であるんだけど、反面とってもスリリングな緊張感のあるものにはなると思いますよ。

普段のクラムボンのライブとは違うシチュシチュエーションですから、お客さんも緊張感を持って観るでしょうね。

普段のライブはフルテンでやってる、映画でいえばマーベル・スタジオなんです。僕らアベンジャーズですよ(笑)!

的確な表現だと思います(笑)!

でも今回はそうじゃなくて。イタリアのヒューマンドラマや日本の『万引き家族』のような、柔らかいけど一本筋の通ってるストーリーってあるじゃないですか。そう言うものを観にいくような感覚になってくれたらいいなと思います。

緊張感という点では、その時間に全ての電気を消すということを徹底している運営側の空気も影響ありそうですね。

だからか実際には見てないんですけど、写真を見たときに一本糸がぴんっと張ってるような景色に見えました。写真が語っていると思いますよ。

ロウソクの火ってホーリーと言うか、潜在的にコンセントレートする何かを持ってると思うんです。精神を引き上げてくれるようなイメージはできているので、いい意味で繊細な音を出せたらいいなと思います。

 

 

自然との作用が生み出す特別な感覚

ここからはITADAKIというフェスについてお聞きしたいのですが、先程緑茶ハイが美味しすぎるというお話を伺いましたが…。

食べるものや飲むものって空気に作用されるんですよね。つまり、空気って調味料感がすごいんです。だからITADAKIで飲む緑茶ハイと、同じ緑茶ハイを東京で飲むのとでは味が違う。別格に美味しいんですよ。もうオフィシャル緑茶ハイ作った方がいいですよ!

ミトさんがそう言ってくれれば売れそうですね(笑)。

あとはオフィシャルタオルかな。普通のフェスに比べて長くて厚めで撥水もいいんですよ。僕はすごい汗っかきなんで、普通のツアータオルじゃ足りなくて。ITADAKIのタオルはコスト的にはアウトなんじゃないかってレベルでいいタオルなんで、買えば今後も絶対に役に立つと思いますよ……ってなんか通販みたいになっちゃいましたね(笑)?!

(笑)。では、ミトさん的にITADAKIの特徴ってどんな所だと思いますか?

環境面でいうと、普通のフェスってパーソナル・スペースが狭いと思うんです。ステージの近くでは肩が当たったり、もみくちゃになることもあるし。でもITADAKIは不思議なもので、人々のパーソナル・スペースが広いイメージに感じますね。その広さって他のフェスにあまりないんですよ。朝霧がまだそれに近いかもしれないけど。

パーソナル・スペースが広いということは何か影響はあるんでしょうか?

僕は音楽だけで消化しないことがフェスの楽しみだと思うんです。それには音楽と空間と自然との作用が必要で、パーソナル・スペースが広いという事はよりそれらを感じやすくなるので潜在的な自分の感覚があちこちに開かれていくと思うんです。

というのは?

本能的に私たちは、他人が近づくと距離感を意識し始め、それが緊張を生みます。その距離感を“テリトリー”というんですけど、人はテリトリーを意識し始めると集中できないんです。だから、ある程度のパーソナル・スペースが保たれることによって、より自分の感覚に集中できる。ただ音楽を聴いてるだけじゃない、他のものを吸収できる気がするんですよね。フェスにとってその作用ってとても重要だと思うんです。

確かにITADAKIの居心地の良さって他のフェスと違う感覚です。

それってフェスの中で、自分でも感じない何かを感じ取ってると思うんです。
そもそも、自然の中で音を鳴らすという事は不自然なんですよ。でも自然に対して音を出せば、その反応は自然から帰ってくるんです。タイミングよく鳥が飛んで行ったり、その時だけ雨が上がったり、自然のレスポンスを感じると自然との境目が滲んでくるようなことが起こる。

フェスで“奇跡のステージ”と言われるものによくある現象ですね

音は空気振動だから、それが作用しているんだとは思いますけどね。雲が低い時にハードな演奏をすれば当たり前のように雨が降るし、霧が強いところで低音を効かせると霧が晴れたりするんですよ。多くの人は自然を予測不可能なものだと思っているけど、実際はすごくロジカルなものなんです。

 

 


 

ミトさんがこの為に用意してくれる新しいスコアはどんなものになるのか。きっと今回話してくれたITADAKIの景色を想像しながら書いてくれるのではないかと思います。当日は皆さんもキャンドルを持参して、クラムボンと一緒にこのステージを作り上げましょう。その空気はきっと自然にも伝わり、素敵なレスポンスを返してくれるはずです。

Written by

mito

mito

クラムボンのバンドマスターとして、ベース、ギター、キーボード他を担当。自身のバンド以外にも、演奏参加、楽曲提供、プロデューサー、ミックスエンジニアとして、木村カエラ、豊崎愛生、花澤香菜、持田香織、toe、SOUR、コトリンゴなど多くのミュージシャンを手がける他、映画やアニメの楽曲制作を行う。

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