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ORIGINAL LOVE

ORIGINAL LOVE

 30年以上活動を続けるオリジナル・ラブの出演は、ことしの「頂-ITADAKI-」における最大のサプライズであり、ハイライトと言って良いでしょう。4月下旬に放送された某ラジオ番組での関係者の発言によると、ことしのラインナップの中で最初に出演が決まったそうです。

去年の夏に彼らの出演が決まって、そこから肉付けしていって最終ラインナップになった…と想像してタイムテーブルを見てみましょう。
1日目はスチャダラパーやMIGHTY CROWNなどヒップホップやレゲエの色が強くて、2日目の前半はスカートやRickie-G、石崎ひゅーいら良質なシンガー・ソングライターの出演が相次ぎます。オリジナル・ラブの出演は彼らの直後で、The Birthday、BRAHMAN、サンボマスターのロックバンド3連発を従える形。ことしの「核」になっているのがよく分かります。

オリジナル・ラブの看板を背負う田島貴男の音楽は、まるでおいしいおにぎりのよう。新旧のブラックミュージックを「具」にして、歌謡性が高いメロディーラインで握り、ファルセットを交えた巧みなボーカリゼーションで包み込む。具が大きい曲があったり、ほとんど「塩むすび」(それはそれで美味!)のような曲があったり。バリエーションの豊かさは職人芸のなせる業だと思います。

 そういう意味では、2011年から始めたという「ひとりソウルショウ」形式の演奏は、「具」がかなり大きめ。先日某フェスで見ましたが、ジャンプブルースのニュアンスを強調した「BODY FRESHER」、とことんジャージーな「接吻」そして、CDではPUN PEEが担当するラップを自分でやってしまう「グッディガール」など、キャリアを総括しながら黒人音楽の歴史を伝道するかのような内容でした。ゴスペルシンガーのようなシャウトが促すコール&レスポンスには、アレサ・フランクリンの「ライヴ・アット・フィルモア・ウェスト」が思い出されました。

 手元に1995年のオリジナル・ラブのベスト盤があるんですが、帯のコピーが秀逸。「オリジナル・ラブは渋谷系じゃない。媚薬系だ!」。まさしくその通り。24年前のフレーズは今も光を放っています。
彼らがステージで見せる「ショウ」のすごみと楽しさは、あらゆる世代に届くはず。吉田公園の緑の芝生の上に、「黒々とした」演奏が放射される瞬間が待ち遠しいです。

 

The Rover (LIVE) ORIGINAL LOVE

朝日のあたる道 ORIGINAL LOVE (PV)

Written by

橋爪 充(頂LOVER /静岡新聞社 編集局)

橋爪 充(頂LOVER /静岡新聞社 編集局)

故郷静岡市に移住直後の2009年、第2回に観客として初参加。2010年から2014年まで文化生活部記者としてアーティストや関係者のインタビュー、開催レポートなどを担当。

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