日本ヒップホップ界の巨星、北海道札幌市から国内全域ににらみを利かせるTHA BLUE HERBは、2013年以来2度目の「頂」出演です。
13年のステージ、今でも時折思い出すことがあります。ジャンルレスのフェスを標榜する「頂」ですが、純正のヒップホップユニットが出演するのは彼らが初めてでした。
ターンテーブルだけが置かれたシンプルなステージ。「冥王星よ、聞いているか…」。暗闇に向かって無伴奏のラップを放つILL-BOSSTINO。そして、静寂を切り裂くようにDJ DYEが繰り出すキック音。1MC1DJとは思えない情報量の多さに圧倒されました。人生の喜びや悲しみを巧みに織り込んだリアルな言葉の数々は、まるでハードボイルド小説のようでした。
約1時間のステージで一番印象に残っているのは、かたずをのんで見守る観客の表情です。一瞬一瞬が濃密でいとおしくて、なんだかみんな放心状態といった顔つき。安直なコール&レスポンスはないのに、不思議な連帯感が生まれていました。
THA BLUE HERBの演奏、いくつかのフェスと静岡市での単独公演を見ていますが、場を支配する力はいつも変わりませんね。
4月中旬に富士宮市で行われた「GO OUT CAMP」では、昼下がりの時間帯に出演しました。「これは究極のアウェイではないか」と思って見つめていましたが、彼らはいつものように自分たちの言葉を叩きつけ、いつものように聞き手や主催者への感謝の気持ちを述べ、いつものように素晴らしい演奏を繰り広げました。
研ぎ澄まされた肉体と言葉がすべて。彼らのステージには、「これぞライヴ!」と感じさせる何かがあります。感情をゆさゆさ揺さぶられ、なぜだか最後には涙が出てくる。
再び13年の「頂」。演奏が終わった後、わたしの後方にいた若者グループは「やべえ」「やべえよ」をひたすら連呼していました。つまりは、そういうことなんだと思います。
「止まるな、やるしかねえんだ」。BOSSの言葉は、この4年間、わたしの糧であり続けました。彼らの4年間、わたしの4年間、「頂」の4年間。変わらないものもあれば、変わったものもある。THA BLUE HERBのステージは、さまざまな人生の交差点、なのかもしれません。
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