5月6日付日本経済新聞に、識者が評価した国内フェスのランキングが掲載されていて、われらが「頂-ITADAKI-」は「ライジングサン」「ロック・イン・ジャパン」に続く第7位に選出されています。
ランキングは音楽祭としての魅力、快適さなどを指標化したもののようです。おそらく大小合わせると100以上は確実にあるだろうフェスの中で、静岡のローカルフェスがこの評価。毎年通い続けている人間にとっては、ちょっとうれしい。
子連れの対応だとか、食べ物がうまいだとか、フェスの良しあしを決める要素はいろいろあるでしょうが、基本的には出演者のラインアップが最大のウェイトを占めていると思うんです。
頂はいつも、そのあたりに間違いがないから支持されている。今年でいえば、やはりロバート・グラスパー・エクスペリメント(RGE)が出演すること。これが音楽フェスとしての「格」のようなものを高めているのではないでしょうか。2016年ならキャロル・トンプソンやデニス・ボーヴェルがそういう存在だったと思います。
さて、RGE。ピアノやフェンダーローズの流麗かつ音の置き方を心得たフレーズ構成を基軸に、ジャズ、ヒップホップ、R&Bなどさまざまなジャンルの音楽をザクッとつかみ取って、精錬させた楽曲の数々がどう演奏されるのか。とても楽しみです。
わたしはこの人たちの曲を聴くと、日本酒の「袋取り」という技法を思い出すんです。発酵が終わった大吟醸のもろみを酒袋に入れて吊るして、そこからポタポタと自然に滴り落ちる液体(=酒)を集めて瓶詰めした、最高級のお酒。長い時間をかけて醸された材料が外的な「圧」がかからずに出てくる構図って、腕利きミュージシャンの素地が無理なく音になって出てくるRGEととても近いような気がしています。
今回の来日メンバーを見ると、ドラマーのジャスティン・タイソンとギタリストのマイク・セヴァーソンが新メンバーですね。2012年の「ブラックレディオ」制作時のメンバーでは、ヴォコーダーを聞かせた歌がこのバンドのフィーリングを決定づけるケーシー・ベンジャミン以外は、全員交代したことになります。
クリス・デイヴとデリック・ホッジのハネの効いたリズムセクションを聴いてみたくはあったけれど、1カ所にとどまろうとしない「司祭」グラスパーの前進する精神はよく理解できます。この編成でニルヴァーナやレディオヘッドの曲もやるんだろうか。
「フェス仕様」の彼らが、頂のオーディエンスとどんな交歓を繰り広げるのか、にも注目しています。
関連動画
Robert Glasper Experiment performing “Day To Day” Live on KCRW
Tribute To Roy Ayers – Pete Rock, Stefon Harris & The Robert Glasper’s Experiment